どうも“ゆっきー”(@ymahh_s )です。
早速ですが、問題です。
偶数と奇数を足すと答えは、答えはどうなるでしょうか。
次の選択肢のうち正しいものを選び、そうなる理由を説明してください。
a.いつも奇数になる
b.いつも偶数になる
c.奇数にも偶数にもなりうる
ちっちっち...タイムアーーップ!
こちらの問題は新井紀子さんの著書『AI vs 教科書が読めない子どもたち』より抜粋してきたものになるのですが、皆さん解けましたでしょうか。
答えはもちろん、「aのいつも奇数になる」ですがこちらの理由が上手く説明できるかが重要なところです。
この回答はと言うと……
本文中に出てくるのでお見逃しなく。
今回の記事は、『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(著者 新井紀子)の教育的内容の濃い第3章「教科書が読めない」を読み、子供たちそして私たち大人に迫る危機についてまとめました。
今の学校教育のままでは子供たちの未来が"ヤバイ"気がしてならないです。
1.AI研究で気づいた1つの疑問
この本の著者新井紀子さんはAI研究を進める研究教授で、2011年より人工知能プロジェクトの「ロボットでも東大に入れるか」を行なっておりました。
この研究を始めると同時に「全国数学基本調査」も牽引することに。
全国のさまざまな大学生を対象として数学力を調査したのです。
そしてこの調査を通してある1つの疑問が、
「数学ができないのか、問題文を理解していないのか」
数学力調査の中で見た結果から、数学ができないのではなくもっと根本的な問題があるのではないか?読解力がなく、問題文をそもそも理解ができていないのではないか。
そしてこの推測を確信に変えるため、新たに基礎的読解力を調査するための
Reading Skill Test(RST)を開発、実施にまで至ったのです。
2. RSTとは?
ここで、RSTについてざっと紹介しますね
・基礎的読解力を調査するためのテスト
・読むことができれば知識がなくても解ける
・タブレットを用いて実施
・6つの読解力に関する能力を問う
このテストは埼玉県の全中学校と小学6年生、教育委員会、新井さんの訪れた高校10校、一部上場企業を対象に約25000人のデータを収集(拡大中)
このテストで問われる能力は6つに分かれています。
「係り受け」主語と述語、修飾語と被修飾語の関係を理解する能力。
「照応」指示代名詞が何を指すのか理解する能力
「推論」様々な知識を総動員して文章の意味を理解する能力
「具体例同定」定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力
「イメージ同定」文章とイメージ(図形やグラフ)を比較し内容が一致しているか認識する能力
「同義文判定」2つの違う文章を読み比べて、同じ意味かどうか判定する能力
まずはRSTの問題に実際に触れて見ましょう。
Ex)Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性に名Alexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適切いないものを選択肢のうちから1つの選びなさい。
Alexandraはの愛称は( )である。
①Alex ②Alexander ③男性 ④女性
Ex)エベレストは世界で最も高い山である。
この分に書かれていることが正しいとき、以下の文に書かれたことは正しいか。
エルブルス山はエベレストより低い。
①正しい ②間違っている ③判断できない
著書の中には他にも例題がいくつか載ってますので気になる方は本を買って読んでください。
ちなみに答えは①Alexと②正しいになります。
さて、自信満々にできましたかね。
こんな感じの問題が実際に出題されるわけですね。
では、気になる生徒たちの成績の方を見ていきましょう
ここではランダム率という指標を用いて成績が出されています。
上記の例題のように、出題される問題は選択式で、各分野でその選択肢の数が違ってきます。
選択であるがゆえに実際に有する能力で解けた回答の他にも偶然ランダムで選択したものが当たったということがあるのです。
そのため、普通の正答率を算出してもその数字の持つ意味をうまく解釈できないのです。
そこで、新たにランダム率という概念を用いて、ランダムでも正当しうる確率を基準に、それより正答率は上か下かでその割合を算出しました。
数字が大きいほど、ランダム正答の割合が多く危険だということがわかります。
どうでしょうか。
3.生徒たちの成績と危機感
中学3年生に焦点を当てて見ます。
"係り受け"と"照応"では20%を下回っています。
数字が大きいほどサイコロと変わらない人の割合が多いのランダム率ですから優秀そうに見えますね。
ですがこれでは安心できません
実は、係り受けと照応は読解力でも表層的な読み能力で、今のAIならこの程度の問題は解けてしまうそうです。
逆にいえばこの20%の生徒たちは解けていない時点でかなり能力が低いかなんらかの問題を抱えている可能性を孕んでいるので早急に対応が必要なのだといえます。
AIはすでに係り受けと照応の能力を持っています。が、まだ他の分野で言えば発展途上。わたしたちはAIと差別化を図るためにその他の能力を有しているか必要があります。
その他の能力はと言うと、残念ながら「推論」では40%以上が、「同義分判定」で言えば70%の生徒たちがサイコロ並みの能力しか持っていないのです。
先ほどの例題(エベレストは〜)の、意味がわからないのです。
この結果が出てわかったのは、じつに教室の半分ほどが教科書の内容をまともに理解しているとは言えない、ということ。
これでは、授業を展開してもまともに理解してくれないのも頷けます。同時に、この事実を知らずになんの対策も取らずに放置している学校教育があるということに危機感を覚えました。
著者はこんな状況でプログラミング教育やアクティブラーニングを導入することに懐疑的です。そして、このような事実を知って僕も賛同せざるを得ませんでした。
現状の改善を早急にすべき状況でしょう。
4.大人の皆さん、あなたもヤバイ
さらに残念な推測があります。
ランダム率の表に戻って見て欲しいのが、高校1年と2年生の成績です。
能力の向上が見られません。
3年生は受験の関係でテストに参加できなっかたためデータは取れなかったようですが、おそらく変化はでないだろうと予想されます。
この事からわかること、それは
『子供だけではなく大人たちもヤバイ。』
大人になれば仕事はしますが、学ぶ時間は極端に減ります。
もちろん勝手に伸びることは期待できません。
冒頭の問題を覚えているでしょうか。
あれは大学一年生を対象とした「大学生数学基本調査」からの例題です。
文系理系問わず実施されたものだそうですが、その中の誤答が深刻らしく、
ぜんぶやってみたらそうなった、
2+1=3だから、
三角と四角を足しても四角にならないから
などがあったそうです。
回答の方は
偶数奇数をそれぞれ2m、2n+1と表してその和が2(m+n)+1であり、m+nは整数だからこれは奇数である。
になります。
もしかしたら近い将来問題なのは大人たちの方かもしれません。
年齢のせいにして学ばず、限界を決めてしまう。
AIに仕事を代替された暁には途方に暮れてしまうことでしょう。
その分、子供たちには伸び代が十分にあります。
教師にはもっと責任を持つ必要があるとやはり感じますね。
最後に
これからAI技術はさらに発展を遂げ私たちが行っている仕事の大半が効率化し、私たちはAIやその他のテクノロジーによって代替されるでしょう。
そして私たちは失うだけ失い、手元の何も残されないと言う状況がありうるのです。
しかし、これからも残っていく、AIに代替されない職というのも存在します。
この職業に共通する点に
「コミュニケーション能力や理解が求められる仕事」
「柔軟な判断が求められる肉体労働」
が挙げられます。
つまり、一を聞いて十を知る能力、柔軟性、フレームにとらわれない発想力が求められるのです。これからはRSTで問われる能力がそのまま求められると言っていいでしょう。
この危機感を目の当たりにした上で、今一度自分自身に問いかけて見てください。自分はAIに代替されないだけの能力を有しているか。身に付けようと努力しているのか。
先述の通り大学を出ているから問題ないということでは決してない。
勝手にはのびない。
もし仮にあなたが教育を担う側であるなら、この事実を重く見ていただきたい。教育の責任を。
今回のまとめは『AI vs 教科書が読めない子どもたち』のうちの本の一部にすぎません。より詳しく知りたい方は是非本を手に取ることをお勧めします。
もっと大事な内容が書かれています。
以上です!
ゆっきーでした。